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誰もが輝ける会社へ。建設現場を離れた彼女が創るのは自らの会社のインフラ

  • 最終更新:2017/10/12

    女性基幹職の先駆けとして飛び込み取り組む、誰もがいきいき働くためのミッションとは

    社会インフラに携わりたいと、女性基幹職(総合職、専任職)の新卒採用が始まったばかりの時代に建設業を選んだ緒方さん。涙することもあった工事現場での外勤も、建物が完成するたびに大きな喜びややりがいを味わえる誇らしい仕事だった。しかし結婚に伴う転勤・夫の単身赴任と、生活に大きなうねりを迎えることに……。自身や家族のライフステージに変化があっても、働く女性やその家族が大切なものを諦めなくてすむように。工事現場を離れた彼女が今つくるのは、自らの会社のインフラだ。

    チャレンジングでおもしろそう!縁を感じたからこそ建設会社に

    学生時代のインターンシップの経験から、社会インフラに携わりたいと考えていた緒方さん。社会の根幹をなす建設業に興味を抱いていた。

    「社会貢献できる仕事として社会インフラに携われる建設業には魅力を感じていましたが、自分の愛する街に自分が携わった建物ができたら、街をもっと好きになれるんじゃないかと想像で心が躍りました。それに『工事現場はそこがひとつの会社・ひとつの“家族”なんだ』と聞いて、自分も一員になれたら素敵だと感じたんです」

    当時の大成建設株式会社(以下、大成建設)にはまだ、女性の基幹職が少なかった時代。それでも入社を決めたのは、地方大学にも会社説明に来てくれるなど縁を感じたからだ。任される業務が多岐にわたるという工事現場の外勤事務は、チャレンジングでおもしろそうだという思いもあった。

    しかし実際に入社してみると、その業務領域の幅広さは想像以上。工事現場の事務所のなかで、経理・人事・総務などの役割を一手にこなしていくのだ。

    「『建てること以外は全部やる』のが外勤事務です。会計、税務、労務、法律、契約、情報管理・・・覚えることが本当に多くて驚きました。事務はそういった知識や、時には一歩下がって状況を俯瞰する能力を持って、自分の親のような年齢のキャリアのある所長と対等な立場で作業所を運営することが求められます。でも、最初は知識も経験も全てが足りなくて信頼を得られず、『現場にいる=“家族”』ではないと痛感しました。想像以上に大変でした」
    そしてある現場の担当になって間もない頃、大きな問題に直面する。施工物件でのトラブルに対応することになったのだ。

    無力さに泣いた日——先輩や上司の助けと支えがあった

    その工事現場の担当になり日が浅かった緒方さん。人間関係もまだまだこれからという時期。トラブルの状況を把握するだけで手いっぱいだった。

    「事務社員の一番の役割はリスクマネジメント。何か問題が発生したら会社として適切な判断を導き出すために、早期にかつ的確に全容を把握しなければなりません。でも私は入社7年目なのに、そのトラブルに直面したとき事実確認をするにも何をしたらいいのか分からず、ほとんどパニック状態でした。今思えば視野がすごく狭くなっていたんだと思います」

    事務社員は複数の現場を兼務しているので、先輩や上司がそばにいないことも多い。
    自分の無力さに泣いたこともあるという緒方さんだが、電話や社内チャットなどを利用し先輩や上司にアドバイスを求め、がむしゃらになって解決を図った。

    「できない自分を認め、問題を解決するために私ができることを考えた結果、一人で悩まず、分からないこと・考えつかないことをどんどん先輩や上司に聞くしかないと思ったんです。現場に事務は私ひとりという環境を孤独だと思った日もあったけど、私はひとりじゃないと実感しました。それに、心から信頼して相談できる上司に巡り合っていたことも大きな心の支えでした。部署が変わってからもいろいろと助言をいただいています」

    そうやって先輩や上司に支えられながら、外勤事務としての経験を重ねていく。ときには男性社会のなかで男性社員がつくってきた風土に悩んだり、男性とは分かち合えない苦しみを感じたりすることもゼロではなかった。それでも“家族”になっていく喜びと、自分が携わった建物ができあがる充実感はかけがえのないものだ。

    そして20 代後半、人生の大きな転機を迎えることとなる。同じ大成建設に勤める遠距離恋愛中の彼との結婚だった。

    結婚・転勤・介護——ライフステージに変化があっても辞めたくない会社になるために

    愛媛県出身の緒方さんは、もともと四国エリアの専任職(※地域限定職)での採用だったため、転勤を伴う異動がない。そこで会社の「勤務地変更制度」を利用し、夫と同居するために首都圏へと転勤することになった。

    工事現場での外勤を離れ、首都圏での内勤への異動。新たな職場はワークライフバランスやダイバーシティを推進する「人材いきいき推進室」だった。
    「仕事の内容が違いすぎてまるで別会社。私の担当は仕事と介護の両立支援や、女性社員へのキャリア・能力開発研修で、制度の企画立案もしています。地方支店からの転勤、男性社会の中の女性社員、私のこれまでの経験を活かせる部署だと思いました。今はテレワークの制度を整えようと必死です」

    人材いきいき推進室は社会の動きともリンクして、社内外から期待のかかる役割を担っている。
    そんな緒方さんは、現在夫と別居している。
    「東京に来て1年半ほどで、夫が東北に異動になり今は単身赴任をしています。週末ごとには帰って来ますが、夫が総合職である以上一緒に暮らせない時期もあることは覚悟しています」

    たとえ配偶者が転勤になっても辞めたくない職場をつくること。夫との別居を経験しているからこそ、それが緒方さんのミッションとなった。

    社員の多様さを受けとめること。そして人口減少社会にも貢献できる建設会社へ

    緒方さんたちが目指すのは、柔軟な働き方を実現することで社員の『働きたい』という気持ちに応えられる会社だ。大成建設でも子育てなどさまざまな理由で時間の制約がある社員が増えている。

    「これから人口は減っていき、街のあり方も変わっていくと思いますが、インフラ整備を事業とする大成建設が貢献できるフィールドはたくさんあるはずです。その前提として、人材いきいき推進室が社員の多様な働き方を支え、“人生”を充実したものにするサポートをしたり、マインドを変えていくことが、サスティナブルな社会づくりのための大事な要素になっていくと考えています」

    すべての社員が、たとえライフステージに変化があったとしても働き続けられるよう、環境を整えていくこと。これから増加していくであろう女性管理職の、女性ならではの悩みやリーダーシップの取り方。育児や介護との両立を支える仕組み。課題は尽きることはない。

    「社員がいきいきと働くために『何をするか』は私たちに委ねられています。すべては自分次第。とてもやりがいがありますし、会社を変えるという強い気持ちで成果を残したいと思っています」

    今は社内環境の整備に尽力しているが、いずれは「私の代表物件」といえる工事に携わりたいとも思っている。外勤の仕事も内勤の仕事も、目的はひとつ。「社会の根幹をなす建設の仕事で社会に貢献する」。緒方さんのチャレンジは続く。