• 最終更新:2017/10/18

    目の前の壁を恐れる彼女にかけられた魔法は、「できるよ」という前向きな言葉だった

    「先週から産休に入りました」。少し目立つお腹をゆっくり、そして優しく撫でながら話し始めた、加藤カンナさん。タピオカミルクティー発祥の台湾カフェ『春水堂(チュンスイタン)』を運営する株式会社オアシスティーラウンジに20歳で入社後は、日本第1号となる代官山店を皮切りに、これまで6店舗の立ち上げを経験。表参道店、新宿店、代官山店の店長を歴任する、『春水堂』の草分けメンバーだ。若くして職責を担う加藤さんは、もうすぐ同社初のママ社員になる。これから母として、一人の女性として、仕事とどう向き合っていくのか。加藤さんの理想の自分像に迫った。

    新人教育を担当。初々しいスタッフの姿に当時の自分を重ねて

    産休を取得する直前は、バックオフィスで新人教育を担当していた加藤さん。現場業務で培った経験を基に作成した研修プランを、まずは今年4月に入社した新入社員に向け、導入した。研修内容は、お茶に関する知識を習得するための座学と技術指導、接客対応やマナーに関する講座、店頭で提供するメニューに関する学習など、『春水堂』のスタッフに必要な、あらゆる要素を網羅したと言う。

    新入社員と一括りにするものの、研修には新卒社員のみならず、同業種から転職してきた中途社員、さらには外国籍社員も参加する。そのため、スキルにバラつきが出たり、文化やバックボーンの違いから受け止め方に差が出たり、難しさを感じる部分もあるのだそう。

    「でも、研修を終えたスタッフが現場で活躍していると聞くたび、大きな達成感に満たされます。どのスタッフにも思い入れがありますが、学校を卒業したての新卒スタッフは、それはもう何もかもがピカピカなので、つい手をかけたくなりますね。入社当時の私も、こんな感じだったのかなって、自分を振り返る機会にもなっています」

    仕事のやりがいをはつらつと話し始めた加藤さん。しかし、そんな加藤さんもはじめから順風満帆だったわけではない。入社を決め、スタッフから店長になり、さらに成長していく過程には、乗り越えなければならない“壁”がいくつもあったという。
    では、今の加藤さんは、どのようにして形成されたのか。現在に至るまでの軌跡を辿った。

    社長面談で号泣! 現場でも溢れてしまう涙。 そんな私を支えてくれたのは……

    パティシエを目指し、製菓系の専門学校に進んだ加藤さんは、ファミレスでのアルバイト経験から接客の楽しさも学びました。そこで、就職先はお菓子づくりと接客の両方ができるカフェにしようと就職サイトで仕事を探すなか、出会ったのがオアシスティーラウンジでした。

    面接官は、社長の関谷さん。
    「関谷の語る『春水堂』の歴史と未来は、聞いているだけでワクワクしたことを覚えています。商品開発に携わることを当時から目標としていた私は、まだ面接の段階なのに、この会社で目標を実現している未来の自分が見えた気がしたのです」

    設立したての会社が営む、オープンしたてのカフェ。“これから”が、たくさん詰まった環境も魅力だったという。こうして、オアシスティーラウンジに入社を決めた加藤さんは、早く成長したい一心で業務に打ち込む。会社はそんな加藤さんの頑張りに応えた。入社2年目のある日、店長職を打診したのだ。

    「しかし、社長面談では、その責任の大きさを前に泣いてばかり。その一方、挑戦したい気持ちもありました。そんな私に対し、社長は『どの年齢でやろうと、はじめは誰もが新人。皆でバックアップするからやってみたら』と、声をかけてくれました。その言葉でようやく前向きになれましたが、最初は悩みが尽きず、やはり毎日泣いていました」

    肩書きは店長だが、店では一番の年下。遠慮もあったのだろう。自分の考えを押し付けていないか、仕事のやり方を指摘していいものか、この仕事を誰かに振ってもよいのだろうか――。店の方針を明確に打ち出し、スタッフを引っ張る立場なのに、あらゆることに判断をつけられない。手に余るほどの仕事を抱え、自滅しそうな日々。そんな加藤さんを救ったのは、一回り以上も年上の男性スタッフだったという。

    「本来求められている店長の仕事をスムーズに行えるよう、いつも先回りしてサポートしてくれました。さらには、社長をはじめ周りの人に支えられていることにも気づけ、ようやく肩の力が抜けました」

    「いつまでお店に立てるのだろう」 妊娠発覚時、私が一番に思ったこと

    店長も2年目のある日、加藤さんは自分の妊娠に気づく。当時の心境はどうだったのだろう。

    「社長には、近い将来、子どもが欲しい旨を伝えてあり、そのタイミングが来た時にどんな働き方ができるのかも確認していたので、慌てることはありませんでした。ただ、体調によって現場に迷惑をかけるのは本意ではありません。いつまでお店に立っていられるのか分からないことは不安でした。そう社長に打ち明けたところ、一言『できるよ』という言葉が返ってきました」

    加藤さんは言う。社長のこの「できるよ」は、決して『身重の体で頑張れ』という意味ではない。“何が起こっても必ずバックアップするから、安心して仕事をしてほしい”というメッセージがこもっているんだと。

    「これまでも心の内を社長に吐露するたび、『できるよ』と返されてきました。そのたびに、自分はちょっとずつ変わることができたと思っています。言葉は魔法ですよね。口にし続けることで、気持ちまでそう思えるようになるんです。今では、私もスタッフに『大丈夫、できるよ』と言うようになりました」

    そう話す加藤さん。復帰後は、どんなポジションに就きたいと考えているのだろう。

    「商品開発に携わるという目標は変わりませんが、今はチャンスがあるのなら何でもやりたい。会社のステージが上がるたび、必要なポジションが出てくると思うので、そこで私の経験が活かされるのなら試してみたいと思っています」

    自己実現に必要なキャリアを真っすぐ歩みたいと考える人も多いなか、加藤さんのようなタイプは珍しい。

    「こだわりがないだけかもしれませんよ」

    そう笑いながら話す加藤さん。いま一番実現させたいことは、生まれてくる赤ちゃんを保育園に預けて、仕事復帰することだという。

    「子どもがかわいすぎて離れられないかもしれませんけどね」

    冗談とも本気ともつかない言葉から、今を幸せに生きる加藤さんの心のなかを見た気がした。

    仕事選びは、フィーリング 飾らない心で就活を楽しんで

    まさに“天職”と言える仕事と出会えた加藤さんに、最後に仕事選びのコツを尋ねた。どうしたら加藤さんのようにひたむきに仕事に打ち込める人になれるのだろう。

    「私は就活が楽しかったんです。人と話すことが好きなので、面接では対応してくれた人の話のなかから、自分との共感ポイントを見つけていました。そこが最も多い企業を選んだら、オアシスティーラウンジだったんです。当社で働いていて思うのは、面接官の話し方や雰囲気、発言は、そのまま会社を表していること。ですので、面接が心地よかった会社があれば飛び込んでみるのも良いのではないでしょうか」

    そう話す加藤さんだが、実は新卒で入った会社を3か月で退職しているんだそう。

    「入りたくて入った会社でしたが、受かりたい気持ちが強すぎて、今思えば無理をしていました。『質問にちゃんと答えられているかな』とか体裁ばかりを気にして、自分に合う会社かどうかまで見る余裕がなかったように思います。その反面、転職活動は、自分の気持ちと向き合えたので、『今度は、私が選んでやるぞ!』という気概でしたね(笑)。この域に達せれば、就活もうまくいくと思いますよ!」

    ここまでざっくばらんに話せるのは、加藤さんが本当の意味で相思相愛になれる会社に出会うことがでたからである。オアシスティーラウンジもまた、社員一人ひとりと真摯に向き合う会社であることを、加藤さんが発する言葉のすべてが語っていた。