女性社員インタビュー
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最終更新:2020/02/07
“働きづらさ・生きづらさ”を感じる社会を変える。母として臨んだ新しいチャレンジ
働きたいけど働けない…。そんな悩みを持つ人たちに向け、雇用の機会を生み出し、一人ひとりが輝ける環境を実現するための取り組みを行うエルティーシー株式会社。
代表をつとめる青山真実子さんは、自身の出産・育児の経験を通して感じた女性特有の“働きづらさ・生きづらさ”をきっかけに、社会において働きたくても働けない人々を支えるための活動を行なっている。
そんな社会と人が抱える課題解決に取り組み、日々奔走する青山さんだが、プライベートでは2児の母でもある。
妻として母として紆余曲折を経て、“やりたいことを実現する”と決意するまでの彼女のストーリーに迫る。
起業のきっかけは働くことに悩み、苦しむ人々の存在
「働きづらい人を働きやすく、生きづらい人を生きやすくする」社会を目指し、2017年に立ち上げたエルティーシー株式会社。
設立の背景には、“働きづらさ・生きづらさ”を抱える人がこれほど世の中に多くあふれていることへの気付きがあったからだと言う。
自身も2度の妊娠・出産を経て、子育てと仕事を両立する厳しさを体験したことにより、多くの女性たちがライフイベントを経るなかで、働きづらくなる時期があることをあらためて知った。
しかしよく目を凝らして見てみると、母親だけでなく働きたくても働けないと感じている人が性別や年齢関係なく多く存在していることに気付くようになった。
一人ひとりが望む働き方を実現できるような、例えば場所や時間に縛られない新しい仕事を生み出し、個人と仕事をマッチングさせる仕組みが必要なのではないかと考えた青山さん。
「『自分たちから変わっていこう』という個人の改革と、新しい仕事を生み出す社会の改革とを両軸でやれないかと考えた結果、人財と仕事を一緒に作ろうと思ったのが、立ち上げの背景でした」
自分らしく働きたい人を支援すると同時に必要な雇用を創出し、人と仕事をつなげる。これこそが、エルティーシー株式会社を通して青山さんが実現したいビジョンだった。
働く女性のロールモデルになると決めた会社員時代。ままならない現実がそこにあった
現在はエルティーシー株式会社の代表として、全く新しいサービスをイチから立ち上げることに尽力している青山さんだが、これまで会社員としてキャリアを積むなかで、“働きづらさ・生きづらさ”を意識する場面に何度も遭遇し、自ら思い悩んだ経験もある。
エステサロンを事業展開していた1社目の企業では、美容業界の過酷な労働環境で働く女性たちが、自身の生き方に思い悩む姿をたびたび見てきた。
「27、8歳ぐらいになると、『仕事が忙しくて彼氏もできないし、将来が見えない』って不安になる。『自分の人生、このままで大丈夫なんだろうか』って…。彼女たちの姿を見ているうちに、私がロールモデルにならなきゃって、強く思うようになったんです」
当時すでに結婚していた青山さんは、自身も出産したいと考えていたタイミングでもあった。女性が働き続けるための社内制度は全く整っていなかったが、人事という立場で仕事をしていたこともあり、「私がやらなければ」という妙な責任感に突き動かされたのだと言う。
そして綿密な出産計画のもと、1社目の企業で2人の子どもを出産。
1人目出産後は、なんと生後3ヶ月の赤ちゃんを連れて出社したこともあったというから驚きだ。
「会社の制度も自分で作りながらなんとかやっていくしかない状況でしたね。しばらく保育園に入れられなかった期間は、成果型の仕事にさせてくださいとお願いして、社内での新しい働き方を自ら提案したくらいでした。」
青山さんは、会社が取り扱う美容製品を販売するネットショップを自ら立ち上げ、売上計画を練った。家で育児をしながらでも成果を出すために、今までにない仕事を自分で作ることで、子どもを保育園に入れられない期間もなんとか仕事をつなげることができた。
そんな社内での取り組みを通し、ママが働きやすい職場環境を作ることに奮闘していた青山さんは、より一層ママの働き方を支援できる仕事がしたいと10年勤めた会社を退職。その後、託児所付ワーキングスペースの運営・展開や保育・託児施設の運営などを行う企業に転職することになる。
人生折り返し地点での決断。世の中を作り変えられる自分だけの仕事がしたい
2社目の企業では、保育士を雇う立場として彼らの労働環境があまりに過酷であることを深く知ることになる。
当時子どもたちを保育園に預ける親の立場として、先生たちに心から感謝しているにも関わらず、保育士の仕事はお給料が上がらなかったり、1日の労働時間が長かったりと、続けられず辞めていく人が多い現実を目の当たりにする。
「こんなに尊い仕事をしているのに、働きづらいと思っている人たちがこんなにいるんだ。」その事実が青山さんの心を動かし始めた。
さらに毎朝顔を合わせ仲良くなった駐輪場の管理を行う年配の男性から、「券売機の導入で来週からシフトカットされてしまう」と言う話を聞いたり、男女問わず仕事の悩みを相談されたりするなかで、年齢や性別関係なく、働きづらさに苦しむ人の存在にあらためて気付かされたと言う。
「社会のルールや仕組みがないからこそ、やる気があるのにそのやる気を消化できない人たちがたくさんいる。その人たちのために有益な社会に作り変えられるような新しい仕事を作っていこうと決意したんです。」
しかし、子育てと仕事の両立でただでさえ苦労する毎日のなかで、彼女を後押ししたものは一体何だったのだろうか?
「起業を決意したのはちょうど40歳を迎えたタイミングでした。人生80年と考えた場合、人生折り返し地点の40歳からはまだ40年もある。今後社会と関わり続けるならこれと言えるものを確立しておきたかったんです。」
周りから反対されるなか、それでも諦めなかったのは「やりたいことを実現するなら今しかない」というこれからの人生を見据えたうえでの決断だったと言う。
これまでワンオペ育児のなかで、仕事と育児の両立に苦しみ、一時はキャリアを諦めた時期もあったと話す青山さん。しかし出産・育児などのライフイベントを通じて“働きたくても働けない”苦労を経験し、乗り越えてきたから自分だからこそやるべき仕事があると確信し、エルティーシー株式会社の立ち上げを決意する。
型にとらわれず新しい働き方を提供し続けることが自らのミッション
現在エルティーシー株式会社では、女性の価値向上支援や女性従業員を多く抱える企業向けの働き方改革支援を行っている。
「働く女性は統計上増えているかもしれないけれど、女性が生きるということに対して、女性の存在価値や介在価値はまだそんなに上がっていないように感じることもある」と話す青山さんは、結婚や出産を機に専業主婦になったママたちが自立できず、自分の意に反して家庭に縛られ苦しむ姿を指摘する。
「世の中の常識に女性がとらわれすぎていて、自分で自分を苦しめてしまう部分も少なからずあるのではないかと思います。ご飯は絶対手作りじゃなきゃダメとか、小さいうちから保育園に預けるなんてかわいそうとか。でも実際に子どもはちゃんと育つし、辛い時間がずっと続くわけではないんです。」
リアルタイムで育児の辛さに悩んでいたとしても、子どもの成長につれ変化は必ず訪れる。
「惣菜ばかりの日が続いたり、夜8時まで保育園に預けたり、ごめんねと泣いた毎日もあったけれど、子どもたちが成長する姿を見て、自分はこれでよかったと思える瞬間が10年くらいのスパンで必ず来ます。だからこそ、働くための第一歩を踏み出すことは、実はすごく大切なんです。」
今までフォーカスが当たっていなかった人々に活躍の場を提供したり、日本にまだない新しい働き方を生み出し、人々が快適に心地よく暮らすための社会づくりを目指す青山さん。
母として仕事と育児の両立に苦悩し、閉塞感を感じる日々があったからこそ、“諦めたくない”という強い想いが彼女を突き動かし、人々が模索する幸福な働き方を形にするために、今後もあくなき挑戦を続けるだろう。