女性社員インタビュー

  • 最終更新:2020/02/25

    子連れフル勤務を可能に。4年間の育休から復帰し見つめ直したママの働く選択肢

    国内大手通信事業者であるソフトバンク株式会社(以下、ソフトバンク)に入社して12年目の辰巳衣里子さんは、二人の子どもの出産で4年間の育児休暇を取得し、2018年4月に時短で復帰した。復帰後に配属となった新しい部署はこれまでの業務内容とは全く違うものだった。加えて、家事、育児、仕事、お給料が全て3割カットとなってしまうことに大きなフラストレーションを抱えていた。「一つくらいはきちんとやりたい・・・」、そう思っていた彼女は社内公募である取り組みを知った。その取り組みに挑戦した彼女のキャリアと家庭への想いを訊ねてみた。

    4年間の育休明けは、全てが浦島太郎状態。育児も仕事も中途半端な自分に落ち込む日々

    ソフトバンクで働く女性社員の育児休業からの復職率は97.6%(2019年3月末時点)と非常に高い。 ソフトバンクでは、コアタイムを設けないスーパーフレックスタイム制度や在宅勤務など様々な働き方に取り組んでいることが、この復職率の高さを可能にしているのだろう。しかしながら、育児休業に入る前の所属部署に復職する率を職種別に見てみると、営業職だった女性が元いた部署へ復職する率は営業職以外のそれと比べて低く、まだまだ営業職の女性が元の営業現場へ復職するには課題があった。

    辰巳さんは4年間の育児休暇を取得し、復職直前はかわいい盛りの子どもたちと長時間離れることが考えられず一時は退職も考えていたという。しかし一生懸命やってきた仕事を辞める決断はできず、認可保育園に預けて時短勤務で復職した。復帰部署は今までとは異なり、営業の獲得案件を入力する登録システムの開発部署だった。育児休暇を取得していた4年の歳月の間に社名が変わり、所属していた部署は解散していたのだ。新しい上長に初めましてのメンバー、独特の専門用語。これまで培ってきた知識を少しは活かせるだろうと思い、やる気満々で復帰したのもつかの間、あっという間に自信を無くしていったという。

    平日にしっかり料理ができない分、 週末は副菜を作り置きしようと、子どもたちには兄妹だけで遊んでもらって何品も作った。しかし、子供たちと過ごす時間が減ったにもかかわらず週末まで平日のことを考え、「かまって」とせがむ子どもたちをなだめながら料理をする。もう、いったい誰のために、何のためにやっているのかわからなくなっていた。

    「かわいい我が子の成長過程を見届けたいという気持ちは強かったです。でも、せっかく復職したのだからキャリアアップも目指したいという想いも一方で持っていました。」

    しかしその想いとは裏腹に、思ったように成果を出せず育児も仕事も中途半端になっているジレンマも感じていたと辰巳さんは振り返る。

    育休明けの営業職への復職はハードルが高い。解決策は子育てをしながら働ける環境の整備

    育児休業からの復職は、出産前の女性社員にとっても将来に対する大きな不安要素となる場合もあるという。お客さま先に伺うことが多い対面営業はスケジュール調整が難しく、お客さまと複雑なやりとりも多い職種。時には休日でも電話がかかってきたりクレーム対応に追われたりと、やりがいが大きい分、ストレスにさらされる機会も多い仕事なのだ。そのため、営業経験のある女性が、元部署である対面営業の現場へ復職することはハードルが高く、育児との両立へ不安を抱き、出産を機に営業現場を離れて事務職や企画職へ転身してしまう人が多いのが現状だと辰巳さんは指摘する。

    「ソフトバンクの法人事業は提供する商材やサービスが非常に多いため、短期間で商品知識や営業スキルを身につけることが難しいんです。そのため、その貴重なスキルや知識を持った営業職経験のある女性が営業現場に復職できないということは、本人の能力を再度生かすことができないという個人の課題であるとともに、組織の営業力維持・強化を図りづらいという法人部門の課題でもありました。」

    出産後の女性営業社員の営業職への復職率が低いという課題を解決する手段を模索する中で、あるとき「ママが子どもと一緒に出社し、子どもの様子を見ながら働ける環境を作ろう」というアイディアが出てきたのだ。営業職だった女性社員が、子どもが小さいうちはかつての営業経験を活かしたインサイドセールス(電話やメールによる営業)の仕事に従事することで営業の感覚や商品知識を維持することができ、いずれ子どもが大きくなった際に、営業現場に復帰できる環境を整えようという構想が持ち上がった。

    「私自身、復帰して1年目は家事育児、仕事をこなすのにとにかく必死でした。 ある日、子どもの顔にほくろができていて、また別のある日、子どもが自分の髪を結べるようになっていたんです。でも、実はしばらく前からの事実であることに気が付いた時は落ち込みました。」

    そして辰巳さんもメンバーとして参画。ママ社員が子どもと一緒に働ける職場環境をつくるプロジェクトが走り出した。

    子どももママも安心していられる環境づくりは苦労の連続。実現に向けて奔走する日々

    最初は企業内に保育所を作ろうと奔走していたが、行政の管轄ということで法律や基準に則った設置場所、必要設備、設置後の監視体制、運用コスト等、高い壁にぶつかかることになる。やりたいことはあっても実際やるにはハードルが高すぎて行き詰っていたところ、キッズスペース付きワーキングスペース運営のパイオニアである株式会社ママスクエアと出逢ったことが、発想を変えるきっかけとなったのだそう。

    「養護と教育を目的とした『保育所』ではなく、預かりをメインとした『キッズスペース付きワーキングスペース」にしてはどうだろう?というアイディアが持ち上がりました。それであれば難易度の高いハードルをクリアせずとも、やりたいことが実現できるのではないかと。そのアイディアが出てから、一気に話が進んでいきました。」

    キッズスペース付きワーキングスペースでは、ワーキングママが子どもと一緒に出社し、子どもたちは常駐している保育スタッフと過ごす。子どもは常に親の目が届く範囲にいて、食事やオムツ替えなどの世話は親自身が行うのだ。あくまでも“子どものそばで働けるオフィス”であり保育所ではないため、設置に対するハードルは下がる。

    「ワーキングママが働き易い環境を作ると方向性を決めて、その兆しもだんだんと見えてきました。でも、会社に子どもを連れて出勤するというのは前例のない取り組み。関係する多くの部門にこの取り組みの重要性を理解してもらわなければなりませんでした。」

    社内説得のために法人事業に携わる関東圏の社員約4,400人に対するアンケートを実施すると、育児休暇中・産休中の女性社員のうち9割もの人が利用意向を示し、非常に多くのポジティブな賛成意見を得られたのだ。この結果を見て、キッズスペース付きワーキングスペースはやはり実現すべき取り組みであることを確信したと辰巳さんは語ってくれた。

    同僚もママ友!仕事も育児も助け合う。子育てママも働きやすい環境で挑戦し続ける

    現在このワーキングスペースでは14人の女性が働き、そのうち12人が子連れ出勤を実際に行っている。育児休暇前は営業職だった女性はもちろん、企画職のメンバーもいる。

    初めてキッズルームを利用する子どもたちの中には、初めての環境に驚き泣き止まない子もいる。そんな時は抱っこして落ち着くのを待ち保育者にバトンタッチ。 そんな状況もワーキングスペースから見えるので、育児経験のあるママ同士、「そんなときもあるよね」と大らかに理解しながら仕事に取り組んでいるという。

    子どものおむつ替えはママの仕事のため、キッズスペースから保育者が「〇〇くん、おむつ替えお願いします」というプレートを出し、ママが対応している。 業務中で手が離せない時は、他のママが対応するなど江戸時代の長屋のようにママ同士が助け合い、情報交換し、刺激しあっているのだ。小さい子供は体調を崩しやすいので、どうしても急な休みは発生しやすい。 そのため業務は属人的にせず、チームでのタスク管理、頻繁な情報共有も行なっている。

    子連れで会社に行くことで子どもと話しながら一緒にランチが食べられる、トイレで体調をチェックできる、初めて会うお友達と自分の子どもがどのように接しているか様子を見ることができる。子どもの様子や成長をそばで見守りながら働ける環境は、周りを見渡してみてもそうそうにないだろう。

    「ママが働いている様子を見せることで、子どもの中に『働く』ということのイメージができるようになって、『今日パパは仕事で忙しいから帰りが遅くなるよ」、という時も子どもなりに理解ができてきているように思います。今回作った新しい働き方を実践できるキッズスペース付きワーキングスペースを活用して、貴重な子どもたちの幼児期の成長を感じながらキャリアアップを諦める女性社員が減ることを願っています。育児休暇を経て得た経験、感情をわかり合えるママ同士、切磋琢磨しながらこれからも挑戦する姿を子どもたちに見せて行きたいです。」