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【パパの育休裏話】「忙しいから無理」は幻想。27名のベンチャーで育休を決めた新発想

  • 最終更新:2019/12/13

    「イクメン」が流行語となってから、今年で9年。彼らの存在は一般社会にも浸透してきました。その一方で、男性の育休取得率は2018年度の時点で6.2%と、かなり低い数値を示しています。「職場が人手不足で忙しい」「収入・キャリアの不安」など、様々な理由により取得をためらう人が多いなか、取得に踏み切った男性たちは何を乗り越え、どのような育児休暇を過ごしたのでしょうか。会社の規模や歩んできたキャリア、家族形態もばらばらな「働く父親」達に、「あなたの育児休暇」について聞きました。

    育休を取得しない理由として多く挙げられるのが、「職場が人手不足で忙しく、育休を取りづらい雰囲気だった」というもの。
     AI CROSS株式会社にてセールス&マーケティング部、セールスマネージャーを務める山本さんは、2ヶ月間の育児休暇取得が決定しています。育休取得を決断した背景や取得までの苦労、男性の育休取得について思うことなど、山本雄士さんの育休取得にまつわるエピソードをご紹介します。

    山本雄士さんご紹介:2017年よりAI CROSS株式会社に勤務。2018年12月に第一子が生まれ、4月から人事職に復帰した奥様と共働きで育児をする。2019年11月~12月の2ヶ月間、育児休暇を取得。

    ~「当たり前」と思っていた育休取得と、世間の認識~

    ──男性の育休取得率は2018年度時点で6.2%と低い状況が続いています。この状況の中で、山本さんが育休を取得した理由は何だったのでしょうか。

    昨年12月に息子が生まれてから、4月に人事職に復帰した妻と共働きで育児をしてきました。互いに忙しい毎日なので、どこかのタイミングで育休を取れたらいいねと前々から話はしていたんです。学生時代の友人が20代半ばで育休をとっていたこともあり、育休自体は「当たり前に取るもの、取れるもの」という認識でした。

    AI CROSSは4年前に設立された会社であるため育休制度を使った前例がなかったのですが、試しに相談してみたところ取得できることになりました。定時退社を徹底したり、時短勤務をしたりすることも考えましたが、子どもが1歳になるまでは両親どちらかがそばにいた方がいいのではないかという考えが、育休取得の背景です。これまでは、緊急で保育園に行かなければならない時は慌てて互いのスケジュールを調整するなど、手間がかかることもありました。育休中は僕が家にいるので、そういった不安やストレスから妻を解放できることもメリットだと思います。

    ──育休取得を申し出たときの会社や周囲の反応はいかがでしたか。

    会社の理解は深かったように感じています。社長や役員に女性が多く子育てに理解があることに加え、メンバーにも子育て世代が多いので周囲の理解も得ることができました。

    友人たちは総じてポジティブな反応でしたね。「(育休を)取れるんだ」という反応も多くありました。「育児休暇」という言葉は知っているけれど、制度を細かく理解している人は少ないようです。自分も取得にあたっていろいろと調べましたが、取得率の低さや情報の少なさには驚きました。最近の学生にとって「留学」や「インターン」が当たり前になっているように、制度を使っている人が周りにいないと、知らないことだらけだし浸透もしていかないと改めて感じました。

    ~育休取得の最大の敵は「仕事を休めない」という思い込み~

    ──育児休暇を取得しない理由として、「職場が人手不足で忙しく、育休を取りづらい雰囲気だった」という声が多く挙げられています。AI CROSSで育休をとる際には、どのようなハードルがあったのでしょうか。

    個人的には、ベンチャー企業の方が育休を取りやすいのではないかと感じています。それは、組織が流動的で「抜けたピースに誰かをはめる」という働き方をしていないからです。大企業のように、大きなプロジェクトの中で細分化されたタスクをこなしていたら、自分が抜けた穴は誰かが埋め、育休から戻った時には自分は必要なくなっているという状況が生まれてしまうのかもしれません。当社は中途社員が多く、自らの役割や長所をよく把握しています。自分の価値を最大限発揮できる場所を各々が理解していることで、互いを補いながらその時々によって柔軟に対応できているのだと思います。

    AI CROSSは今年の10月に上場をしているのですが、上場直後は一人ひとりがとても忙しく、本来ならば休むなんて考えられないような時期でした。僕自身「忙しくて休めない」という気持ちも分かりますし、取得後のキャリアを不安に思うことはありました。しかし今は、育休を機に新しい仕事にチャレンジできるかもしれないと希望を持っています。仕事が忙しくて休めないという気持ちもわかりますが、僕は考え方を変えることで取得を決めきりました。こういう考えにシフトできないと、ベンチャー企業でも育休を取るのは難しいのかもしれませんね。

    ~ロールモデルが切り拓く、働く父親の未来~

    ──育休制度を使うにあたって、最も苦労したことはどのようなことでしたか?

    僕の場合、取得申請の段階でつまづきました。制度自体の理解ももちろんですが、どのくらいの規模の会社の、このポジションの人は◯ヶ月取得しています、といった情報もないので、何をもって取得や期間を判断すればいいのかわからなかったことがストレスでした。

    同じようなところで壁にぶつかる男性も多いと思うので、育休取得者のロールモデルが現れるといいなと思います。僕自身、就活生だった頃に育休を取っている男性がいるのかということを気にしたこともなかったですし、説明会に行っても「我が社のエースは、◯歳で育休をとったあとに魅力的なキャリアを歩んでいます」といった話があるわけでもないですよね。育休取得後のキャリアプランを示したり、こんな有意義な時間を過ごしましたと伝えられたりする、そんなロールモデルを増やせたらいいですよね。

    ──山本さんご自身は、2ヶ月の休暇をどのように過ごす予定でしょうか。

    第一に、子どもの成長を「線で」見たいと思っています。これまでは成長を「点で」しか見てくることが出来なかった気がするので、長い時間を過ごす中で我が子の成長を感じたいです。

    ──これから育休取得を考えている人へ、どんな言葉をかけますか?

    日本には「家庭を大事にする人がかっこいい」文化がないこともあり、休みづらい雰囲気もあると思います。それでも、少しでも関心があるのなら、「取ろうと思っていたのに取れなかった」と後悔する前に育休取得について一度調べてみてほしいですね。

     

    ※本記事は2019年11月取材日現在の内容です。